とべない沈黙 [極私的映画感想]
1966年 日本
監督 : 黒木和雄
評価 : ★★★
さて。ようやくの黒木和雄作品(デビュー作)。自分的にも同監督の作品を鑑賞するのはこれが初めて。
えーとね。凄いですよ。この作品は。でもなんと表現すればいいのかな…。
例えばこんな感じでしょうか。これから書くすべてのコメントの直後に、(笑)とかwとかを付けたいような。
そんな映画です。どんな映画だ!
出だしから幻想的です。なんだか昔のゴジラとかを想起させる感じ。不思議な美女(加賀まり子)が登場して、「おっ! 小美人?」とか思ってしまった。
当初北海道のお話かと思いきや、どんどん舞台が飛びます。で、ナガサキアゲハの幼虫がそれぞれの土地に登場し、作品の意図を示しているということだけは分かる。
分かるのだが…(笑)
的な。
で、なんとなくメロドラマっぽい男女の絡みなどがあり、ここからそんな感じで流れていくのかなぁなんて思っていると、思いっきり裏切られます。でもそこら辺りから、そんなストーリーはどうでも良くなってきます。
何故って、とにかくキャメラが凄い!凄すぎる!!
撮影:鈴木達夫
ってことなんだが、この名前は絶対に覚えておいた方がいいだろう。強くそう思わせる、あり得ないショットの連続。あひー
で、とにかくもう最後までキャメラの凄さを追いかけて観よう…と思ってたら、終盤でとんでもない展開w いきなり「おいおい、急にドキュメンタリーかよ!」と突っ込みたくなるシークエンス。あひー(笑)
わたくしそこら辺りで思わず、「日本のゴダール」ということばでググったぐらいです。もしかしたらそう呼ばれてる作家なのかなと思って。
さらにオモロ素晴らしいのが、黒木和雄自身の著作『映画作家黒木和雄の全貌』という本のなかに記された、この映画の上映を巡るあれこれに関する一節。ちょっと引用すると、
ところがまたもトラブルが惹き起こされた。封切りがきまり、全国にポスターと予告篇がかけられていた段階で、東宝の首脳陣の試写があった。内容は詳らかにしないが、即日オクラ入りが決定した。仄門するところでは「気狂い映画」「とても東宝が劇場にかけるしろものではない」ということであったらしい。
アッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノアッヒャッヒャ! 即日オクラ入り! き、気狂い映画!うぷぷぷぷ!!
まぁ、そういう感じの映画です。
さらに引用。
一方この珍作が「新鮮」と評されたのには、鈴木達夫の貢献が大きい。(~途中省略~)この『とべない沈黙』をみた日本の若手映画作家たちがこぞって鈴木達夫と組みたいと切望した。吉田喜重、松本俊夫、篠田正浩、寺山修司、藤田敏八たちである。
ということらしい。実際凄いぞこのキャメラは!
つーことでですね、映画を観るってことは物語を追うことだと思っているような手合いには決しておすすめできないけど、「斬新なショットがあればご飯三杯はいけるよ!」ってな人にはメチャクチャおすすめします。はい。凄い映画です。
なにげに、前述の加賀まり子をはじめ、小沢昭一、小松方正、長門裕之、渡辺文雄、田中邦衛等々キャストも凄い。
それにしても…
き、気狂い(正しい読みだと変換できない!!)映画
(* ̄m ̄)ぷぷぷ
★について
そもそも極私的な感想であって、決して客観的な評価を狙ったものではありません。
ゆえに★の数は、単にfouがその作品を気に入ったかどうか、その一点に集約されます。
星は最大5つ。
☆は0.5を表す。
★★★★★ もう最高。この後すぐにDVD買いに行きます!
★★★★ けっこうすばらしい作品。金が出来たらDVD買うかも。
★★★ 良作。心のノートに「なかなかナイス」と書いておく。
★★ 凡庸。特に評価しません。
★ 時間のムダだった。オレの貴重な時間を返せ!
尻毛 論外。これは断じて映画ではない。