天井桟敷の人々 [極私的映画感想]
1944年 フランス
監督 : マルセル・カルネ
評価 : ★★★☆
言わずと知れた、映画史上に残る大名作とされる作品。この映画をオールタイムベストに選ぶ企画や評論家も多い。
トータル3時間を超える大作。2部構成になっていて、前編は『犯罪大通り』、後編は『白い男』とタイトルがついている。
といった感じで、いわゆる名画としての地位が確立している作品なわけだけど、本当のところあまり期待して観たわけじゃなかった。後世のさまざまな作品に影響を与え、それらの下敷きになってきたであろう作品だけに余計、今観ると古臭くさい感が拭えないんじゃないだろうか? と想像したのがその理由。
だけどそうでもなかった。今観ても十分に面白い。
観ている最中からひとつ、ずーっと引っかかっていたことがあった。今それを調べてみたわけだけど。驚いた。あのシークエンスってセットだったんだ…。
というのは、冒頭から人々が行きかう賑やかなパリの大通りが出てくるわけだけど、それがロケによる撮影なのかあるいはセットなのか気になっていたのだ。
だけどセットにしてはあまりにも規模がデカ過ぎるし…。と思っていたら、全長400mにおよぶセットを建設し2000名以上のエキストラを配し撮影に臨んだらしい。すげー!! そりゃロケと勘違いしても不思議ないよ。
そういった、パリに暮らす人々のエネルギーを伝えるショットもこの映画の魅力だし、よく言われることだが登場人物たちの気の利いたセリフもまたすばらしい。その辺は脚本家で詩人でもあるというジャック・プレヴェールの力量なのだろう。
物語上、主要な登場人物たちが舞台俳優であるという設定とも無縁ではないのだろうが、キャラがみな分かりやすく“立って”いて、かつ魅力的。自分は特にフレデリック・ルメートルが気に入った。
ひとつだけ難を言えば、劇中かなりの美女として扱われるヒロインのギャランスがどう見てもおばさんだということ。映画においてはよくあることとは言え、少々残念。
でもでも、ラストのカーニバルの場面は圧巻だし、バチストが人波にさらわれてもがく様は美しい。
見ごたえ十分の名作。
★について
そもそも極私的な感想であって、決して客観的な評価を狙ったものではありません。
ゆえに★の数は、単にfouがその作品を気に入ったかどうか、その一点に集約されます。
星は最大5つ。
☆は0.5を表す。
★★★★★ もう最高。この後すぐにDVD買いに行きます!
★★★★ けっこうすばらしい作品。金が出来たらDVD買うかも。
★★★ 良作。心のノートに「なかなかナイス」と書いておく。
★★ 凡庸。特に評価しません。
★ 時間のムダだった。オレの貴重な時間を返せ!
尻毛 論外。これは断じて映画ではない。